平成30年7月14日琵琶湖のコアユ


■琵琶湖の代表的な魚にアユがいます。ワタカのように固有種ではありませんが、県外の海有県のアユとは違った習性や特徴を持っています。

■通常のアユは秋の産卵期が近づくと成熟とともに川の下流に移動します。いわゆる落ちアユです。体色も黒ずんできます。その後下流の早瀬で集団で産卵します。1匹のメスに多数のオスが群がる形で放卵・放精します。卵は1mmくらいで抱卵直後に卵の外側の膜が反転し、その膜の粘着力で砂利に付着します。その後10日〜1週間くらいで孵化し、そのまま流され海に到達します。生まれた仔魚は5〜6mmで糸くずのように弱々しく、5日目くらいまでにエサの動物プランクトンが豊富な海に到達しなければ餓死してしまいます。

■その後、春先までは沿岸部で成長し、5〜6cmに成長した後、春頃から河川に遡上し、やがてなわばりを持つようになり、石に付いた付着藻類を食べて大きく育ちます。

■さて、琵琶湖のアユは海で稚魚期を過ごす通常のアユと同様に4月頃に琵琶湖から遡上し、河川で大きくなるいわゆるオオアユがいる一方で、一生のほとんどを琵琶湖で過ごすコアユがいます。種としては同じですが、琵琶湖では多くがコアユです(小さいために年間を通して佃煮に利用されます)。

■産卵期だけ琵琶湖流入河川に遡上し、河川下流部で産卵します。琵琶湖では稚魚から成熟するまで、ずっと小さな動物プランクトンを食べているので、大きくなれないのでしょう。しかし、このアユも河川に放流すると、通常のアユと同じようになわばりを作って大きく育ちます。そのため、古くから県外の各地に放流され、友釣りに利用されてきました。平成に入って厄介な冷水病が流行ってから、県外では地元のアユを人工生産するようになって、琵琶湖のアユは徐々に使われなくなってきました。

■また、かつて放流アユに混じって琵琶湖の他の魚類が一緒に放流され問題になって、敬遠されるようになってきました。しかし、琵琶湖のアユはなわばりをつくる性質が強く友釣りでよく釣れることや、海のアユよりも鱗が細かく見た目が美しいこともあっていまだに根強い人気があり、かつてほどではないですが、琵琶湖産アユを放流している他県の河川も多いのが実情です。

■近年は琵琶湖のアユを直接放流するするのではなく、いったん養殖業者が冷水病の治療をしながら数か月間養殖して、ある程度大きく育ててから放流することが多く、その過程で混入魚は排除され他の魚が混入することは少なくなっているようです。おそらく病気の魚や他の魚が混入していると商品価値が落ちるので、育てる側も神経を使っているのでしょう。なお、琵琶湖のアユは塩分に弱く、他県に放流しても海に降りてから死んでしまい、再生産はしないようです。産卵期も琵琶湖産アユの方が若干早く、あまり交雑もしないようです。

■ここからが本題ですが、先の大雨の後、河川に大量に遡上したと聞いていくつかの河川を見てきました。姉川などでは、水が濁っておりあまり見えなかったのですが、西浅井の大川(という小河川)や知内(ちない)川などでは、堰堤を飛び越えようとするアユがたくさん見られました。しかし、あと1か月もすると産卵期なので、この時期に上ってもあまり大きくなれないし、この酷暑では川の水が少なくなって秋雨や台風の季節が来るまで酸欠で死んだり干からびてしまわないか心配です。滋賀県の川は天井川がほとんどで中流部で干からびやすいのです。

■そう考えると、ほとんどが琵琶湖で過ごすという独特の習性は、理にかなっていると言えそうです。琵琶湖特有の適応かもしれません。

■姉川と高時川の合流点。魚食生のサギやカワウがいます。


■黒っぽく見えるのがコアユの群れです。


■大川。飛び跳ねるコアユが見える。


■一方大浦の港にはバスとギルばかり。


■知内川のアユを獲る簗


■その下流は魚だらけ。大きい順からニゴイ、ハス、コアユ。


■小さいのがアユ


■知内川中流。バックは赤坂山


■魚道に溜まったコアユをタモで掬う。


■石田川下流


■堰堤の上ではアユが跳ねている。


■安曇川北流の簗。遠くて魚は良く見えない。


■南流。濁って魚は良く見えないがアユを狙って鳥がたくさんいる。


■安曇川中流。帯状の黒い筋は実はコアユの群れ。


■確かにたくさん遡上している。


■盛んに跳ねている。


動画→ https://youtu.be/4Vrfmonkjlc

■高島鴨川。次々に釣りあげられている。


■ここもニゴイやハスに混じってコアユの群れ。


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