伊吹山ドライブウェイへの違和感と不信感


(令和5年8月10日 追記)
■ドライブウェイの料金所で配られるリーフレットにようやく「伊吹山を守る自然再生協議会」の取り組みが書かれました。協力金のことも書かれています。自分にとっては朗報です。もう少し大きく書いてくれるとなお嬉しい。ドライブウェイ運営会社さま、ありがとうございました。みんなでイヌワシが舞う伊吹山を守りましょう。



■伊吹山ドライブウェイ(DW)は山頂植物群落にアクセスするには非常に便利で、私もしばしば利用しています。自然保護団体による植物群落保全作業にも欠かせない道路です。DW売店・食堂のスカイテラスの伊吹蕎麦は絶品ですのでおすすめ。

■おすすめの山菜蕎麦


■しかし、料金所で配られるリーフレットには「たくさんの高山植物」との記載。1500mに満たない伊吹山は分類上低山なのに? 「伊吹山の高山植物」という言葉は新聞などでも書かれていたりしますが、非常に違和感を持ちます。伊吹山は高山に匹敵する高度感と絶景を楽しめる山ですが、標高1377mの低山です。高山植物があるはずもない。これが、違和感の理由

■伊吹山から琵琶湖方向の絶景


■リーフレットには「夏に咲く高山植物には、シモツケソウ、イブキトラノオ、イブキフウロ、オオバギボウシ、キリンソウ、クガイソウ、コオニユリ、メタカラコウ、ルリトラノオ、シシウドなどがあります」とあります。たしかに伊吹山の植物には、シモツケソウ、イブキトラノオ、ハクサンフウロ、キンバイソウなど標高2000〜2500m級の亜高山帯の山地草原にも生えるものも含まれていますが、タカネリンドウ、チシマギキョウ、コマクサといった高山帯に咲く花はありません。麓の登山口(米原市上野)で「伊吹山を守る自然再生協議会」の活動として配られるリーフレット(登山地図)には「高山植物」という言葉は使われていません。

■伊吹山の特徴は、霧(雲)に覆われる日が年の3分の2と多く比較的寒冷で、(温暖化で少なくなりましたが)雪が多く、日本海側の多雪地帯に多い植物や北方系の植物が多いことや、石灰岩質を好む植物や温暖な地域を好む植物、ルリトラノオ、コイブキアザミなどの固有種が多いことから多様な植物が生育することで、植物の分布上重要な場所であること。これが「山頂植物群落」として天然記念物に指定されている理由なんですよね。

■亜高山にも分布するキンバイソウ(手前)と温暖なところにも広く分布するアカソ(後)


■そのリーフレットによると、秋には「サラシナショウマ、イブキトリカブト、アキノキリンソウ、イブキアザミ、シロヨメナ、リンドウなどが咲き、高山植物の「百花繚乱」が続きます」とのこと。これらは高山植物ですか? 麓や低山でも咲くショウジョウバカマやニリンソウも春の高山植物に入れられている。


■「高山植物」といえば聞こえが良く集客出来るのかもしれませんが、ミスリードだと思います。いい加減改めていただけないでしょうか。一般観光客に誤解を与えてしまいます。


■鶴見緑地「咲くやこの花館」による高山植物の定義


■伊吹山には高山植物はないと明記されている。


■DWによる高山植物の定義をあえて言葉にすると「少し高い山野に生える植物」or「伊吹山に生える植物」といったところでしょうか?


■その「高山植物」。今やシカによって消えかねない状況。DW運営会社も「伊吹山を守る自然再生協議会」のメンバー。でも、そのリーフレットにはシカの食害のこと、保護のため柵が設置されていること、登山協力金のことが一切書かれていません(HPにも見つけられません。探したらないだけでしょうか)。一般の観光客に対して最も植生保護について啓発できるお立場であり、伊吹山の「高山植物」の恩恵を受けていらっしゃるはずなのに。しかも、リーフレットのシモツケソウ群落の写真は、獣害保護柵に囲われた「伊吹山もりびとの会」様が管理されている再生実験区の写真のようです。これらが、最大の違和感と不信感の源。(麓の上野登山口で協力金納入者に配られるマップにもシカ害のことは書かれていませんが、一緒に配られる「伊吹山花だより」にはその時々のシカ対策や被害の状況が書かれている)。

■「高山植物」の宝庫の現状(東エリア)


■さらに言えば、東の岐阜県側の笹又からの登山者は途中(北尾根との接点)からDWを歩かなければ頂上まで行けないところ、そこかしこに登山者歩行禁止の看板。ゆえに、伊吹山頂上に行く登山道は、実質上野からの正面登山道のみ。これはDWが自動車専用道であることから仕方がないとしても、DWの待避所を車で埋め、すべてではないですが、中には車道を歩いたり横断したり、ガードレールを越えて三脚を立て長時間居座っておられるイヌワシカメラマンの皆様はOK? 貴重なお客様だから?

■今ではシカが増えすぎて、人が立ち入らなくても植生は回復しませんが、DW沿いにも貴重な植物があってカメラマンの立ち入りが以前から問題になっていたはずですが。個人的にはイヌワシ撮りの皆様も協力金納入に協力していただきたいところ。シカにより生態系が崩れればその頂点に立つイヌワシにも影響が出かねないと思います。

■イヌワシ撮りの皆様。ガードレールの外に出て三脚を立てる人もおられる。



■以前DW売店で購入したDWをPRするDVDには、「天空の楽園」というキャッチコピー。このまま植生が衰退すれば絵空事になると思いますよ。

■DWから西遊歩道への入り口にある協力金箱。もっと伊吹山の現状と協力金についてPRいただけないでしょうか?


(令和3年8月15日記)


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