伊吹山保全への提案 -生態系の頂点に立つイヌワシを守るためー


シカの食害により裸地化した南斜面で、7月12日の集中豪雨により土砂崩れが起こった。裸地化し表土が流され始めた5合目から上部においては、生物多様性が極端に低下した。


■9合目から上部の頂上台地では、西、中央、東に分けてAF柵で囲われ、シカの食害を防止する取り組みが続いているが、中央と東エリアに関しては、AF柵の修繕が進んでおらず実質機能していない。西エリアにおいても、シカの侵入により植物相の貧弱化が急速に進んでいる。

■東エリアにおいては、2年前にシカがあまり好まないサラシナショウマが増えたが、今年に関しては、その群落もほとんど消えつつあり(西エリアでは多い)、イブキトリカブトの葉も捕食されている。

■さらに中央エリアでは山小屋が設置した花壇やスポット防護柵の中以外では、シカの不嗜好植物とされているキンバイソウも確認できなくなった。このことから、特に中央と東エリアにおいてはシカの食害がすすんだ結果、エサが不足し不嗜好植物まで捕食するようになったと思われる危機的状況となっている(不嗜好植物でも種類により不嗜好の程度が違うと思われる)。

■京大芦生演習林で実績のあるAF柵(ポールに支えられた柔軟な網で構成)に毎年修繕が必要になる理由は、シカが頂上台地の植物に異常に執着し、乗り越えたり、角や頭で網の下部を押し上げたり、歯で齧って穴をあけたりすることと、AF柵の支柱の固定力がそれに耐えられずに倒れたり、冬季の積雪の移動で倒れたりすることにあると考えられる。


■現在、伊吹山にテリトリーを持つイヌワシのペアが1羽の幼鳥を育てているが、イーグレットオフィスによるライブ映像では、巣に運び込まれるエサが少なく、巣立ちが通常より遅れており、エサ環境が悪化していることを推察させる。異論はあると思うが、生態系ピラミッドの頂点に立つイヌワシが、生産者である植物相の貧弱化の影響を受けていることが容易に類推できる。

■令和5年7月17日、ドライブウェイ頂上駐車場で、イヌワシの行動を観察したところ、ドライブウェイ上部の通称伊吹北尾根から東エリア手前の小ピークで、低空飛行で索餌しているイヌワシペアの姿を確認したが、その後東エリアには入らず南東斜面の方向へ進路を変えた。また、東エリアに隣接する南東斜面はイヌワシの狩場となっているとの確からしい情報があることから(某有識者)、遊歩道のある東エリアでエサを探すことをせず避けているものと考えられる。


■東エリアでは、アナグマが生息している。また、ウサギなどの一次消費者、キツネなどの2次消費者も生息しているか、出入りしている可能性が高く(一時期頂上へのキツネの出現が話題になった)、当然ヘビも棲息すると思われ裸地化が進んでいる柵の外よりもイヌワシの狩場として機能する可能性がある。


■そこで、植生保護の強化と、イヌワシの狩場を創造するための現実的な案として僭越ながら次の提案をしたい。


(提案)
1  現在機能不全となっている東遊歩道の植生防護柵(AF柵)の支柱と網を強固なものに変更する(支柱の基部を深く埋める。支柱を支える支柱を強化する。網を積雪に備えて取り外し可能な金属製、または一部で使われている金属糸を編み込んだ耐久性のあるものに全面的に改修するなど)。

2 特に毎年網やポールの破損が多く発生し、シカが侵入しやすい場所であると考えられる東エリア南面から東面にかけては、ユカエル(金属製のシカ侵入防止装置)や電気柵を併用し2重の防護とする。

3 シカの隠れ家となる灌木帯を伐採し(昭和57年頃に衰退しつつある「お花畑」復元のためその原因となる低木やチシマザサの伐採が行われた実績がある)侵入後も追い出ししやすくする。


東エリア全体を新たに動植物の保護区とし人の立ち入りを禁止し、イヌワシが狩り場として利用できるようにする。(そもそも東エリアの利用者は他のエリアと比べて少ない)


5 さらに伊吹山の頂上台地全体をイヌワシの狩り場とするため、繁殖期の平日をドライブウェイから上部を立ち入り禁止に出来ればよりよい。現在、伊吹山周辺では囲い罠、箱罠での駆除が実施されていますが、人が入らない期間で銃器によるシャープシューティングも可能になる。


6 維持費として入山協力金以外の寄付のしくみを作る(伊吹山イヌワシ基金、クラウドファンディングなど)。イヌワシを保護したいと考える人たちからの支援も期待できる。

■イヌワシを含むすべての動植物にとって、生態系の回復は急務である。全域が無理であるなら、出来る範囲でも保全する必要がある。やがてシカが自然減少、移動、有害駆除により減った後に、そこが種場となって、周囲の生物多様性を高めるきっかけとなるはずである。




令和5年(2023年)7月18日(火) 記(適宜修正



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